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2025

ゴルフに指標ってあるの?

同期の佐藤からバトンを引き継ぎました大場です。


私のことを知っている人は皆わかっていると思いますが、私は野球観戦が趣味です。朝MLBを見ながら通学し、昼は最近は大学野球を見て、夜はNPBを見ています。そんな野球観戦が大好きな私ですが、観戦の際に気になることの1つが「指標」です。例えばMLBを見る際には知らない選手もよく出てくるので、Baseball RefarenceやFangraphsを見てその選手の情報を確認したりします。MLBはこういうサイトで無料で詳細な選手データを確認できるのが素晴らしいポイントの1つです(こういうのが見られないばかりか中身スッカスカのくせに読み込みに時間がかかるNPB公式サイトは本当に酷い)。


さて、野球には様々な「指標」が存在します。代表的なもので言うと、投手が9イニングあたりに与えた自責点を指す防御率や、打者の出塁率と長打率を足した値のOPSといったところでしょう。スポーツに科学が取り入れられ、野球においても00年代頃より「セイバーメトリクス」がデータ分析や研究分野に持ち込まれます。セイバーは、投手の勝敗や打率、ホームランといったオールドスタッツだけでは選手の本来の実力を測れないとし、各種の新しい指標を用いて選手の本当の価値を確認しようとするものです。特に投手の勝敗が真にその実力を示すものではないことは近年では常識です。例えば2018年、Jacob deGrom(NYM)は217イニングを投げ、防御率1.70と圧倒的な実力を見せつけながらとことん無援護に見舞われ、サイ・ヤング賞を受賞した投手のシーズン勝利数としては最も少ない10勝(9敗)に留まりました。今回のブログでは、野球に存在する指標というものが、ゴルフにあるのか、また必要なのかを考えます。


一旦脱線して、セイバーの基本的な指標について3つほど紹介してみたいと思います。完全に私の趣味なので次の節まで飛ばしていただいて構いません。


1つ目の指標は、やはりWAR(Wins Above Replacement)でしょう。これは、それぞれの選手が代替可能な選手と比べて何勝分チームの勝利に貢献したかというものです。先ほど述べたBaseball ReferenceとFangraphsの両方が選手のWARを公開しており、前者をrWAR、後者をfWARと呼ぶのが一般的です。WARの素晴らしいところは、投手と野手の貢献度を比べるのが容易になった点だと思います。MVPや新人王を選出する際にはWARが非常に重視されます。2024年ナ・リーグのMVPレースについて見てみましょう。ご存知の通り24年ナ・リーグのMVPは史上初の50−50を達成した大谷翔平(LAD)が受賞したわけですが、大谷選手のrWARは9.2、2位のFrancisco Lindor(NYM)のrWARは7.0、3位のKetel Marte(AZ)のrWARは6.8でした。このように、基本的にはこう言った投票にはWARが用いられるわけです。ちなみに一般的にWARランキングの上位は野手が占めることが多く、ナ・リーグの投手でrWARトップはMVP投票5位のChris Sale(ATL)でした(MVP投票20位までに投手は4人のみ)。


2つ目は、wRC+(weighted Runs Created Plus)です。これは打者に関する指標で、打者がリーグの平均的な打者に比べて1打席あたりどれほどの得点貢献をしているかというものです。リーグ平均を100とし、120であれば平均的な打者より1.2倍打撃で貢献しているということになります。こちらはFangraphs社が出している指標で、Baseball  Reference社はほぼ同様のOPS+という指標を公開しています。ちなみに球場補正が入っているので、どのような極端な球場でプレーしていても平等に比較できるのが優れています。そのため、本拠地もタイプの違う打者も比較することが可能です。例えば2023年、打率1割台でホームラン47本という意味不明な成績を残したKyle Schwarber(PHI)のwRC+は120と意外と傑出していたわけではないことが分かったり、真逆のタイプでいうと同年打率.354で首位打者ながら四死球と長打が極端に少ないLuis Arraez(MIA)はwRC+130であり、Arraezの方が打撃で貢献していたという意外?な結論が得られたりするわけです。


3つ目は、tRA(true run average)です。これは投手の指標で、奪三振/被本塁打/与四死球という3つの守備の介在しないイベント及びどのような打球を打たれたかという要素も投手の責任と定め、守備から独立した推定失点率です。例えば、奪三振というイベントはほぼ確実にアウトがとれ、またほぼ確実に失点が起きません。一方被本塁打というイベントは確実にアウトにならず、確実に失点するため、最も危険なイベントです。奪三振、内野ゴロなどの安全なアウトの取り方が多く、被本塁打や外野フライが少ない投手ほどtRAという指標において評価されます。例えばK%(奪三振率)が約26%と対戦打者の4人に1人以上から三振を奪いゴロ率も優秀だった去年のグリフィン(巨人)のtRAは実際の防御率3.01に対し2.48、一方K%が約12%と平凡でフライ率も55%と高かった去年の岸孝之(楽天)はグリフィンより良い防御率2.83に対しtRA4.25でした。このようにtRAを見れば、投球内容によった実際の投手の実力を知ることができます。


さてあまりに長い脱線となりましたが、本題はこのような指標がゴルフに存在するのかという話です。簡単に思いつくゴルフの指標といえば、フェアウェイキープ率やパーオン率、平均パット数でしょうか。これらの指標は、ゴルフのプレーにおける「結果」に着目したものであり、野球で言えば打率や防御率に対応するものということができると思います。ここで先ほどのセイバーの考えを再確認すると、その目標は選手の真の価値を明らかにするというものでした。フェアウェイキープ率、パーオン率といった指標が真にプレーヤーの実力を反映しているとは言えないポイントはあるでしょうか。例えば、ゴルフ場は十人十色の特色を持っており、フェアウェイの広い/狭いや、グリーンの速い/遅い、風が非常に強いゴルフ場もあります。様々なゴルフ場でプレーした結果を、1つのフェアウェイキープ率などという結果に落とし込むのは、簡易的な指標であるがゆえに雑であると評価できるかと思います。この考えを参考にすれば、ゴルフにおいても野球のような打球の質を基にした指標があってもおかしくないように思えます。


では、なぜゴルフには野球で使われるような指標が存在しないのでしょうか。結論から言うと、ゴルフはプレーヤーが介入できない要素が野球と比べて極端に少ないからです。野球の場合、球場の広さ、守備力、風などによって大きく防御率、打率、本塁打等の成績に影響がもたらされます。そのため野球では、一見優れた成績のようだけど内容が伴っていない場合やその逆があり得ます。一方ゴルフは、そもそも止まっているボールを打つという競技の性質上、風で打球が戻されたり曲がったりするなどの不可抗力はあれど(それも番手の変更や打球の質次第で対応可能)、狙ったところに打球を置くことは少なくとも野球よりははるかに簡単です。先ほど紹介したtRAの考えでは、投手がコントロールできる範囲は被本塁打、与四死球、奪三振、打たれる打球の質だけであり、例えばゴロが内野の間を抜けて以降がアウトになろうが投手の責任ではないとしています。しかし、ゴルフではそれなりの技術があればラフを回避したりフェアウェイの左右に打ち分けたりできるため、「あのOBは不運だった」とかいうのはナンセンスです。


つまり、ゴルフは普通にプレーしていれば上手さは見えてくるので、わざわざ指標など作らなくても選手の能力を正当に評価することが可能と言うことです。「スコアとしては悪いけど指標的には意外と悪くない」とか言うことはなく、スコアが悪いのはひとえに自分が悪いのでちゃんと練習しようということですね。


今回ブログを書くにあたり、実際にショットのうまさを示す指標を作ってみようかとも考えましたが、バンカーならプラス◯◯打増える、ラフなら◯◯打・・・といったデータを取るにはサンプルが少なすぎるため断念しました。しかも、どう考えてもそんな指標を考えてる暇があったらショットを曲げない努力をした方がいいのではないかという当然の考えに至りましたので、この辺で締めさせていただきたいと思います。


次回は、ドローしか打てなさそうなフォームからフェードを打ちたがっているように見える佐々木くんに引き継ぎます。


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